社会の課題

#1 2020年の社会課題 | 母親の努力と忍耐で成り立ってしまっている両立をつくりなおしたい

ノーベル代表理事の高亜希です。
私たちノーベルは「子どもを産んでも当たり前に働ける社会」を目指しています。

私が民間企業で働いていた頃、先輩や同僚、友人たちが子育てを理由に会社を辞めていくことを目の当たりにしました。

保育園に入れたら子育てと仕事の両立はできるものだと思っていたのに、なぜ女性が仕事を諦めなくてはいけないのか、そんな社会の実情に疑問を持ち、女性ばかりだけが負担になる社会をなんとかせねば!と、2009年にノーベルを立ち上げました。

葛藤10年。病児保育だけでは仕事と子育ての両立をサポートしきれない現実

2009年11月10日に団体を設立し、関西初となる共済型・訪問型病児保育事業を10年にわたり、続けてきました。

「深夜に子どもが発熱。でも明日は仕事を休めない。頼れる人も近くにいない」

そんな働く親御さんを支えるために、保育スタッフが会員宅に訪問し、病気のお子さんをお預かりする。当日朝8時までの予約には、100%対応する。それがノーベルが10年以上続けてきた病児保育です。

・ひとり親世帯、スペシャルニーズ世帯を寄付で支える仕組みづくり
・企業などの法人との提携
・自治体との協働
・親子に寄り添う安心安全の保育の積み重ね

「病児保育を誰もが利用できるセーフティーネットにする」

その一心で取り組んだ結果、利用会員は累計で3,700世帯を超え、ご利用いただいた保育件数は累計で1万6000件、利用者満足度は12年連続で95%を達成しました。

一方で、病児保育を充実させてきた10年は、「病児保育だけでは仕事と子育ての両立をサポートしきれない現実と葛藤してきた10年」でもありました。

母親の努力・忍耐で成り立つ両立が多すぎる

ノーベルの活動をして10年以上が経過し、出産後に働く女性は増えました(※1)
子どものいる世帯のうち、共働き世帯は既に7割を超えています(※2)
幼保無償化や働き方改革の取り組み、男性育休も義務化に向けて動き始めるなど、社会は少しずつ変化してきたことを感じています。

共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移

※1 共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(男女共同白書令和4年版)

※2 夫婦と子供から成る世帯の妻の就業状態別割合(男女共同白書令和4年版)

しかし、その中身はどうでしょうか?
みな、理想の両立ができているでしょうか?

「子育てと仕事の両立が大変…しんどい…」という声は絶えず、少なくなるどころか増えている気配さえもあります。

日本の子ども・子育て支援に対する公的支出は、GDP比で1.65%(2018年)。
OECD平均の2.34%を下回り、出生率を引き上げたフランス(3.6%)と比べると半分の水準です。

保育園や幼稚園のお迎え時間に合わせて懸命に仕事を終わらせ、子どもを迎えに走り、家族のごはんの支度をして、子どもにごはんを食べさせ、子どもと遊び、お風呂にいれる。
小さい子どもであれば、お風呂の後に洋服を着せることだけでも一苦労です。寝かしつけをして、眠気と闘い次の日の準備を済ませる。子どもが小さい頃は特に自分の時間を持てる余裕はなく、ごはんを食べるのもやっと。まわりを見渡すと、家事育児の多くを担っているのはたいてい母親です。

家事育児の負担が母親に偏っていることは、国際比較を見ても一目瞭然です。(※3)
母親がフルタイムかパートタイムかに関係なく、父親の家事育児時間は極端に短いのが実情です。(※4)

※3 男女別に見た生活時間(1日あたり 国際比較)(男女共同白書令和4年版)

※4 夫婦の仕事時間、家事・育児関連時間(末子の年齢別)(男女共同白書令和4年版)

父親たちも、もっと育児に時間を使いたいと思いながらも、長時間労働の日本社会の中で、そうはいかない現実もあるでしょう。

「家計の大黒柱は父親」
「家事と育児は主に母親が担う」

変わらない社会のシステムや価値観の中でもがいている親御さんたち。
両立がしやすくなったわけではなく、仕事も家事も育児もぜんぶ担う母親が増えただけにすぎないんだと。

このままでいいんだろうか。
いや、母親たちの努力や忍耐で成り立つ両立をこれ以上増やしていいはずがない。
私はそう思うのです。

2030宣言 「両立をつくりなおそう」

仕事に理想を持っていいし、できないことは頼っていい。
そして、頼るべき人は家族の外にいることも知ってほしい。
ひとりで抱え込まない両立に、ぜひ踏み出してほしい。

いつでも産める。子どもを預ける自由と理解がある。
納得して働けて、明日もがんばろうって思える。

母親だけでなく、家族も勤め先のチームや組織も、
そして地域も行政も、これを見ている皆さんも。
子育て世代と関わりのあるすべての人が、
今ある状況を見直して、
ひとりで抱え込みがちな現代の子育て社会に理解とできることを示していく。

それが社会全体で子育てをするということではないかと思うのです。

創業から10周年を迎えた2020年。
そんな「新しい両立」を目指し、私たちは次の10年をかけて、日本の子育てと仕事の両立をつくりなおすと決め、2030年に向けたアクションプランを発表しました。

2030年へのVISION BOOK(PDF)

 

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