(2022.08.31更新)
代表長谷亜希ノート
#4 コロナ禍の新しい挑戦の連続と大切な気づき。方向転換へ
代表の高亜希です。前回の記事ではノーベルの次の10年に向けた新しい一歩、一時保育施設「ノーベルさんのおうち」のお話をしました。
一時保育施設「ノーベルさんのおうち」をOPENした同時期の2020年1月、日本では新型コロナウイルス感染症が発覚、たちまちその勢いは拡がりコロナ禍の生活へ一変し、私たちの主軸である訪問型病児保育事業は大きな打撃を受けました。
新しい一歩を踏み出し、これからという時に、新事業である「ノーベルさんのおうち」以外の新しい取り組みは全てストップし、主力事業である訪問型病児保育の立て直しに注力せざるを得ませんでした。
新型コロナウイルスがまだどういったものかわからない中、情報収集しながら現場での感染予防対策、コロナ感染症に対応する新しいルールなどを都度決めていきました。
走りながらつくる、げんきっ子保育
2020年5月には、ノーベル会員の皆さんへのアンケート調査を実施し、コロナ禍の影響をどのように受け、どのようなサポートを必要としているのか、生の声を集めました。
(※2020年度アニュアルレポートより)
結果、「元気な子どもを預かって欲しい」というニーズがあることがわかり、コロナ禍の緊急支援として、元気な子どもをお預かりする訪問保育「げんきっ子保育」を試験的に2020年7月にリリースしました。(※現在では正式なオプションとして提供しています。)
しかし、ここでも新しい挑戦の難しさに直面します。
コロナ禍において、スピード重視で仕組みをつくり、リリースしたげんきっ子保育。
基本的な安心・安全の保育は病児保育同様に守って設計しましたが、現場の保育スタッフさんたちから改善や要望の声が相次ぎます。
「病児保育をやりたいからノーベルにきた」
「病児と元気な子は違うのに枠組みだけ同じでいいのか」
「げんきっ子のルールが整っていないのではないか」
「イレギュラーが現場で起きる。それを想定してるのか」
「決まったことをおろされただけではやらされてると感じる」
保育の担い手の課題や壁
私は訪問保育を10年以上、実践してきたのだから、しかも一番難しい(と思っていた)病児を預かることができているから、ノーベルスタッフなら元気な子どもたちも預かれるだろう、この緊急事態の中だからこそ、走りながら、つくっていきたいと考えていましたが、うまくそのことを伝えきれませんでした。
新しいことをしようとすると、すぐに人材不足に陥ります。保育業界では採用しようと思っても、競争が激化しており、新規採用はとても難しいものでした。給与に対する業務負担が見合わないという理由から保育士の退職が多く、保育士不足に陥っている園が多い、というニュースをよく目にしていましたが、けっして他人事ではありませんでした。
「ノーベルさんのおうち」と「げんきっ子保育」という2つの新しい事業を並行して実施することで、その保育の担い手に関する多くの課題や壁に直面してきました。
そして、私は1つの決断をしました。
やりたいことを実現するために、サービスのつくりこみよりも、保育スタッフさんたちのイキイキとする土台づくりを優先すると。
ビジョンブックには担い手がイキイキする土台づくりに取り組むことを書いていました。しかし預かりの選択肢を増やすことが先行してしまい、このことが逆だったのだと学びました。
コロナ禍という特殊な状況で、病児保育の現場においても高いリスクを抱えることになってしまうという事情もあったとはいえ、せっかく志を高く持って入ってきた保育スタッフたちが退職していくこと、これほど悲しいことはありません。
これまで安心・安全の病児保育、利用者満足度12年連続95%超を徹底してきたノーベルの保育は、保育スタッフたちが積み重ねてきた誇りでもあります。この誇りを大切にしながら、持続可能な働き方、イキイキとした働き方を実現するには、なにが必要なのか。
さらには保育業界全体の問題として、ケアの担い手の労働環境や賃金をもっともっと改善できないのか。担い手がイキイキする土台づくりの課題はたくさんありました。
現場の保育スタッフとともにつくる
そして、まず取り掛かったのが「げんきっ子保育をみんなでつくろうプロジェクト」です。
創業以来ノウハウを積み重ねてきた病児のお預かりではなく、元気なお子さんをお預かりする場合において、うまくいくケースとうまくいかないケースに、どんな差があるんだろう。
「げんきっ子保育」の現場で起きた実際の事例を参考にしながら、保育スタッフも事務局メンバーも、マネージャーも、みんなで一緒に考えたら、解決策が見えるんじゃないか。こうして、このプロジェクトは始まりました。
このプロジェクトを「げんきっ子保育をみんなでつくろうプロジェクト」と名づけ、参加したいスタッフを募りました。そして、保育スタッフ6名、事務局メンバーに3名、そして代表・副代表の2名で、プロジェクトがスタートしました。
開始してまず現場の声としてあがったのは、「元気な子どもを保育する際のあそびや、1日中自宅で遊ぶコツ、引き出しを増やしたい」というニーズでした。そこで早速、講師を呼び、あそびを学ぶ場をつくりました。
ただ、進めていく中で、病気の子どもではなく、「元気な子どもを預かる上で何が大切なのか」という疑問が浮かび上がります。
病児保育のゴールは「はやく回復して元気になって通常の生活に戻れたらいいね。」というもので、病児ケアが中心です。一方で「げんきっ子」は何をゴールにするの?子どもや親御さんにとって何が大事なんだろうか、という新たな問いが生まれました。
「げんきっ子保育」は何を目指すのか、保育理念や保育方針など、“子育てと仕事の両立を支える私たちノーベルの保育の根幹”を言語化していこうという場に変化していったのでした。
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