
(2025.02.05更新)
代表長谷亜希ノート
生成AIを活用して、「訪問保育者向け学びのプラットフォーム」を試験運用開始
先日、ノーベルは
訪問型保育だからこそ“考える保育者”を育てるNPOノーベルが生成AIを活用した「訪問保育者向け学びのプラットフォーム」を試験運用開始
というプレスリリースを出しました。
ここにいたるまで約3年。ノーベルにとって重要なターニングポイントとなった日を振り返りながら、この学びのプラットフォームの意義についてお話したいと思います。
一人ひとりの生きがいや楽しさが組織をつくる。
コロナ禍から1年が経過したころ、私は経営者として1つの決断をしました。コロナ対応をする中、誰一人笑顔の人がいませんでした。必死で、疲弊している姿をみて、「経営において優先すべきを働き手にする。」と誓いました。
今考えると、これがノーベルにとってターニングポイントだったと思います。
子育て家庭を支えたい!を実現するためにリソースををどこに向けるのか。それは子育て世帯を支える側でないといけないと思い、働いている一人ひとりが楽しいか、イキイキしているか、そのためには何をするべきかを考え続けてきました。
ちょうどその頃、Google.org インパクトチャレンジ for Women and Girlsというプログラムがあってサポートするので申請してみませんか?というお話がありました。そこで、 働くスタッフがイキイキしてこそ目指す未来を実現できる!という思いの元、訪問型保育者のための学びとつながりのプラットフォームをつくろうと思いました。
周りのサポートもあり、私たちはGoogle.orgから85万ドルという多大なる支援をいただけることになりました。
そう、私たちはこの資金があったからこそ、地道に丁寧に取り組むことができたのです。
働くとは?!訪問型保育が抱える課題に向き合った日々。
そもそも、ノーベルの訪問型病児保育は創業時からずっと高い評価を得ていました。ただ、働き手にとっての評価はというと…直行直帰で長時間1対1で子どもをケアする大変さ、孤独感、賃金の低さなどが以前から課題としてあり、退職率は高め、思いだけではどうにもできないと経営者としても頭を悩ませていました。
実際に1年かけた調査では下記6つの課題が浮き彫りになりました。
<訪問保育者にとっての6つの課題>
①安定した勤務・収入
②家庭との両立・働きかた
③バックアップ体制・危機管理サポート
④心身の健康
⑤学びの機会
⑥仲間・相談先
これらを解決していかなければいけない!そこで、優先的に取り組んだのが⑤と⑥でした。
(※①や②については抜本的な改善を人事メンバーに依頼)
経営者として10年以上組織をみてきた私にとって、イキイキと生きがいを持って働き続けているスタッフたちの共通点が⑤と⑥を自ら得ているということでした。
もし、⑤と⑥が体系化でき、誰でもいつでも学びの機会やつながりがもてたら、変化していくんじゃないか。それがノーベルの外にも広がったら、子育て家庭を支える人がたくさん増えるのではないか。そんな仮説の元、プロジェクトが始まったのでした。
改めて「働くとは?」を考えさせられた時間でした。
3年がかりで学びを体系化
~1人ひとりの可能性を最大限に活かしたい~
訪問型保育の現場は、保育園などの施設型とは異なり、訪問する家庭の環境はすべて違い、保育に最適化された空間設計とは限らないために、環境的なリスク要因も様々です。また、ひとりで訪問があることがほとんどで、様々な事柄にひとりで考え、対応していくことが求められます。そのために、自ら考える保育者となるための学びを提供しなければいけません。
まず、私たちが取り組んだことはノーベルの訪問型保育の知見の体系化です。
なぜノーベルの保育は質が高いのか、高い評価を得ているのかをしっかり言語化することからスタートしました。
株式会社クリエイティブシフト(慶應義塾大学総合政策学部の教授/井庭 崇氏)との出会いがあり、パターンランゲージというすでに豊かな経験を持っている人から「コツの抽出」をし、他の人が「やってみたくなるヒント集」として提示するという、新しい「知恵の伝承&学び」の方法を活かし、2万件の保育の言語化を行いました。
その経過は下記ブログに詳しく書かれています。
#7 世界で唯一のパターン・ランゲージカンパニーとの出会い
#8 訪問保育のパターン・ランゲージ制作。約300の保育の種から49個のパターンを抽出
#26 訪問型保育のパターンランゲージが完成!~ノーベルの訪問型保育は25のパターンからできていた~
また、並行して取り組んだのがリアルに学び合える場づくりでした。ここもティール組織の解説者でありNPO法人home’s viの代表である嘉村賢洲氏に入ってもらい、学びの場をどう体系だててつくりあげるか議論と実践を積み重ねつくりあげました。
こちらも経過をブログにしていますのでぜひお読みください。
#9 場づくりのプロから日本・世界のコミュニティの事例を学ぶ
#10 ティール組織・ビュートゾルフのあり方から学ぶ組織の仕組み
#12 コミュニティづくりをする上で大切なこと。〜Community Nurse Company の視察から@島根県雲南市〜
そして、何よりも、子育て家庭のためにサポートしたい!と思いを持った人たちの可能性を最大限に引き出すためには?を考える上で、保育というキャリアにとどまらないという選択肢をつくることをしたいと思いました。現場のスタッフには本当に可能性に満ち溢れていて、保育の現場だけではなくもっと活躍できる場が必要だし、あるんだというのがこの15年間で感じていたことだったのです。そこから、学びを通してキャリアアップができる仕組みを作りました。
生成AIの登場で計画が方向転換?!
次に待っていたのはこれらのできあがった学びのノウハウをどう活かすのか。システムの開発を一からするという計画を当初は練っていたのです。UXやUI、管理画面をどう設計するのかデータをどう蓄積していくのか。私たちのような少数精鋭の団体では結構ハードルが高いなと思いつつ準備を進めていた矢先、生成AIが登場したのです。
これは、救世主だなと。蓄積されたデータをそのまま入れ込むだけでいい。これを使わない手はないと思いました。早速、生成AIを活かす!とスタッフに本を1冊ずつ買って、とりあえず読み込んでくれと依頼しました。笑
そして、ChatGPTでノーベル独自の学びのプラットフォームを地道につくる作業が始まったのでした。
昨年末、スタッフたちがノーベル版ChatGPTを通して、試験的に質問しているミーティングに参加した際、現場での困りごとに的確に答えているChatGPTの回答をみて、感動しました。また、精度が高いのにも驚きました。
この15年間みんなが現場で積み重ねてきたものが結集されている。そして、これをいつでもどこでもみんながアクセスできて、またさらにみんなで育てていく。そんな循環がリアルにもオンラインでもできるなんて、すごい時代になったなと。
学びのプラットフォームの全体図はこちらです(詳しくはプレスリリースをご覧ください。)
改めて、働くうえで1人ではなく、誰かとつながり学び続ける機会や環境を整えることはとても大切だなと思いました。社会をどうしたいと考えたり、語るよりも、支える側の一人ひとりの可能性をどう活かすのかがとても重要なんだと痛感した3年間でした。
何もないところからここまで完成させられたのはスタッフ1人ひとりの積み重ねのおかげです。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
さぁ、いよいよこれを本格的に活かす時がきました。
みんなで学び合いながら、働いている一人ひとりが楽しく、イキイキしている。そんな自ら考える訪問型の保育者が世の中に増えていく。結果、たくさんの子育て家庭のサポートになるように、これからも進んでいきたいと思います。
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