(2022.10.21更新)
代表長谷亜希ノート
#8 訪問保育のパターン・ランゲージ制作。約300の保育の種から49個のパターンを抽出
訪問保育におけるパターン・ランゲージの制作に取り組むこと。
その過程の中で、パターンを言語化する最初の第一歩である保育スタッフへのインタビューがスタートしたことを前回の記事でお伝えしました。
インタビューを通して、訪問型保育の種をあつめていく
前回の元保育スタッフ天野さんのインタビューを皮切りに、ほかの保育スタッフたちへのインタビューも実施しました。
そのインタビューを通して、毎回子どもの年齢も病状も環境も違う多様な保育であっても、保育スタッフたちの実践には共通するものがあるとわかってきました。
インタビューでは、保育スタッフにインタビューをする人と、話の中でコツと思われるものを書き出していく人、二手に分かれます。
クリエイティブシフトの阿部さんから、次のようなインビューのコツを教えてもらいました。
それは、HowとWhyがセットとなるように実践している具体的な行動や考えに対して、その具体的な行動をする理由を問い続けるというものです。
・保育スタッフが日々現場で意識していること
・様々なケースで判断する際の考え方
・子どもとの関係性の作り方
・親御さんとのコミュニケーションでこころがけていること
教わったコツをもとに、聞く側のスタッフたちが丁寧にインタビューしてくれたおかげで、具体的な行動や考え、その理由をまとめたスプレッドシートには次々に種となる言葉が綴られていきました。
(※シートを一部抜粋)
インタビュー内容を聞いていると、
・子ども主体であること
・現場では一期一会だからこそ、起きること1つ1つに柔軟に臨機応変に動いていること
・両立をサポートするために現場での役割を意識していること
などが印象的で、それらの行動が保育スタッフ間で共通していることが改めて分かってきました。
保育スタッフへのインタビューの全行程を終えると、スプレッドシートにはぎっしりと書かれた約300もの種が生まれていました。
1つ1つの保育の種をながめ、似た者同士、仲間をつくっていく
さて、次はこの種を似た者同士あつめていくという、クラスタリング作業に入っていきます。まずは1つの種に対して1枚ずつ、その内容を紙に書き起こして、机の上に全て並べます。
そして、みんなで1つ1つの種を眺め、似た者同士をグループにしていきます。
クラスタリングでは
・まずは1対1の関係を意識する
・目指していることが同じかどうかをみる
・禁止用語は「●●系」「●●カテゴリー」「●●分類」
とルールを定め、既存の自分のメガネで見ないように意識し、みんなでじっくりゆっくりと1枚1枚の言葉をみていきます。
そして、クラスタリングがある程度できると、同じ仲間の種に共通するコトバを付箋に書いていきます。
実際に、1つ事例を紹介します。これは「子どもにとっても、親にとっても味方でいる」というコトバを、いくつかの種に共通するものとして抽出しました。
2日目に突入し、ある程度保育の種の仲間分けとコトバの抽出をすることができてきました。
そして、3日目もひたすら眺めながらこれでいいのか、微調整、修正をしていきます。
1文字1文字、1つ1つの言葉の意味を、丁寧に確認していきます。
保育スタッフのインタビューから生まれた約300の保育の種から、仲間分けをすると全部で49個のパターンができ上がりました!!
どんな言葉になっていくのだろうか、もっとインタビューをしたいと、わくわくとドキドキの気持ちが次々湧き上がりました。でき上がったものを見ると、子ども目線、親目線、保育スタッフ自身の目線などしっかり網羅され、またノーベルらしい言葉になっていました。パターン・ランゲージのすごさを改めて感じたのでした。
そして、最後に49個のパターンそれぞれを文章にする作業(仮ライティング)を行い、抽出作業は無事終えることができました。
パターンのいくつかをご紹介したいと思います。
● 親御さんの安心感や信頼感を得るために第一印象を大切にする
● 子どもが楽しむきっかけをつかむために、あの手この手で試し続ける
● チームでの保育を実践するために情報を引き継ぐ
● 子どもの命を守るために聞くべきことは聞きやるべきことはやってもらう
● 子どもに一対一でとことん向き合うことで、子どものサインに気づくことができる
● 子どもにとっても親にとっても味方でいることで、ノーベルさんにしかできない立ち位置をつくる
● 本部に報告することで、子どものケアにも自分自身のケアにもつながげることができる
インタビューやクラスタリングを通して抽出されたコトバは、12年間のノーベルの活動の積み重ねから生まれたものです。これまでノーベルの『子どもの「今」を大切にする』という保育理念を日々体現してくれていたことを誇りに思います。そして、これこそノーベルの価値だと思いました。
このような過程を経て、『でき上がったパターン・ランゲージを理解し、訪問保育の現場で実践することで、子どもにとっても、保護者にとっても、保育者にとっても、良い方向へ向かっていく』というイメージがさらに具体化されました。
そして、ここからはいよいよ、3~4か月かけてこの49個のパターンの全体像と位置づけをとらえて体系化し、それぞれの文章を作成していくステップに入ります。
現時点でのお話をすると、完成まで間近!のところまできています。
また、進捗状況を改めてお知らせします!
- CONTENTS
- #1 2020年の社会課題 | 母親の努力と忍耐で成り立ってしまっている両立をつくりなおしたい
- #2 2030年へのロードマップ | 子どもを産んでもフツーに両立できる社会をどうつくる?
- #3 一時保育室「ノーベルさんのおうち」のOPENから、泣く泣くの撤退まで
- #4 コロナ禍の新しい挑戦の連続と大切な気づき。方向転換へ。
- #5 私たちが目指す保育とは。12年の実践知から保育者も事務局も経営者も、みんなでつくる
- #6 保育の担い手のための学びとつながる場づくりに挑戦。Google.orgインパクトチャレンジ採択決定
- #7 世界で唯一のパターン・ランゲージカンパニーとの出会い
- #8 訪問保育のパターン・ランゲージ制作。約300の保育の種から49個のパターンを抽出(本記事)
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