ノーベルと学ぶ保育

保育スタッフ研修|子どもの虐待を学ぶ

こんにちは、ノーベル事務局です。
ノーベルでは保育スタッフに向けて定期的に専門的な研修を開催しています。
今回も講師を招いて「子どもの虐待」について学びました。
講師は、NPO法人み・らいず2 野田満由美 先生です。虐待の種類・どんな関わり方があるのか・私たちが出来ることなど、この日は30名以上の保育スタッフがオンラインで参加しました。

どのような研修だったのか、日々の保育にどう活かせるのか、今回の研修で学んだことをレポートします!

子ども

虐待の種類を知る

1)児童虐待(2002年児童虐待の防止等に関する法律)
2)高齢者虐待(2006年高齢者虐待防止法)
3)障がい者虐待(2010年障がい者虐待防止法)

今回クローズアップするのは「児童虐待」です。2002年児童虐待の防止等に関する法律が制定され、ニュースや新聞などで幅広く報道されていることもあり多くの人がこの言葉を耳にするようになりました。
30代・40代の子育て真っ最中の世代は、自身の子ども時代にはこの法律もなく、また、虐待という言葉自体もあまり周知されず、幼少期は叩かれたり、家を閉め出されたり、親からの「しつけ」として、そんな体験をされた方も多いのではないでしょうか。
研修の中で「自分は叩かれて育ったのに、自分の子どもにはどう接すればいいのか」「叩かずにどう叱ればいいのか」そんな悩みを抱える子育て世代がいることも学びました。
虐待は、親から子への連鎖があり、法律が制定され今は移行期であることに改めて理解を深めました。

子どもの虐待の分類

●身体的虐待:身体に外傷を負わせる、生命に危険のある暴行
●心理的虐待:言葉による脅迫、無視、心や自尊心を傷つける言動を繰り返す、きょうだい間差別
●性的虐待 :子どもへの性行暴行・行為などの教養や教唆
●ネグレクト:学校へ行かせない、病院に連れていかない、衣食住が極端に不適切、家や車に置き去る
●経済的虐待:子どもの合意なしに財産や金銭を使用する

「子どもの権利条約」を知っていますか?

子どもには大きく分けて4つの権利があります。(子どもの権利条約)

子どもの権利条約

※公益財団法人 日本ユニセフ協会 子どもの権利条約より

生きる権利

すべての子どもの命が守られること。

育つ権利

もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療や教育、生活への支援などを受け、友達と遊んだりすること。

守られる権利

暴力や搾取、有害な労働などから守られること。

参加する権利

自由に意見を表したり、団体を作ったりできること。

これは、子どもだけのものではなく、親が子育てをする中で、迷ったとき・悩んだとき・これで合っているかな、そんなときに「立ちかえる基準」にもなります。
例えば、「しつけ」は、将来のことを考えて子どもの教えるものです。

しかし、それは子どもにとって最善のこと(タイミングも)なのか、大人の都合で今やらせたいのか、そんな悩んだときに、立ちかえる基準や、誰かに相談できる環境があるといいですね。(=自分の理性を踏みとどませるストッパー、ほかにも趣味や話せる仲間などがあります)

参考:こどものケンリ 大人も子どもも、知っておきたい話(セーブ・ザ・チルドレン)

小中学校でのスクリーニング

大阪府内の小中学校では、虐待を発見するためのスクリーニングがおこなわれています。
誰が見ても「この子、心配だね、気になるよね。」と気づける仕組みです。
遅刻や早退・持ち物・服装・授業中の様子・怪我・学力・成長・虫歯などの様子を学校でチェック。子どもたちは「なにかあったら言ってね」と声をかけても、なかなか自分から言い出せないものです。そのため、行動や態度・持ち物・サインなど見て取れるもので、大人側からサポートの声をかけていきます。
学校内と学校外(こども食堂など)の両軸でスクリーニングを取り入れている地域もあるそうです。

小学校

虐待は子どもの脳を”物理的”に変形させるという事実

虐待(マルトリートメント=不適切な養育)により、子どもの脳への変形の影響が出ることが研究されています。これは研修を受講して初めて知ったことだったのですが、心理面だけではなく、脳への物理的影響も出るという研究結果に非常に驚きました。(友田明美氏による研究)
現在、研究で分かっていることをご紹介します。

身体的マルトリートメント

体罰をはじめ、直接的な子どもの身体への暴力を受けた子どもへの影響
●感情・思考・判断・応用のコントロールが難しくなる(前頭葉の「前頭前野」が萎縮)
●痛みに対して鈍感になるように脳を変形させる(痛みを伝えるための神経回路が細くなる)

心理的マルトリートメント

言葉の暴力・差別・罵倒・脅しなどの暴言にさらされた子どもへの影響
●聴力・会話・コミュニケーションがうまくできない(側頭部にある「聴覚野」の一部が肥大)
●強い自己否定の気持ちを植え付ける

家庭内暴力(面前DV)

子どもの前や耳に届く場所で家庭内暴力を見たり聞いたりすることでの影響
●他人の表情を読みにくく、対人関係がうまくいかなくなる(大脳後方の「視覚野」が萎縮)

ネグレクト

子どもに必要な養育を与えないことでの影響
●愛着障害につながる、喜びなどを生む「線条体」の働きを弱める
●左右の脳をつなぐ「脳梁」が萎縮

性的マルトリートメント

子どもへの性行暴行・行為などの教養や教唆での影響
●後頭葉の「視覚野」が萎縮

虐待はいつ起こるのか

1/3が日常的連鎖、1/3は親の高ストレス状態で連鎖すると言われています。
高ストレス状態での連鎖は、ノーベルとして・一般市民として・ママ友として、様々なカタチで関わりを持ち、少しずつでもストレス軽減をサポートすることが可能ではないでしょうか。

また、世代間ギャップもあり、子育ての価値観も変容してきているため(自分の時代は叩かれた、母乳で育てるべき、母親はこうあるべきなど)、自身の「隠れた気持ち」を隠れたまま(隠したまま)にせず、その気持ち表に出しましょう。誰しもが、子どもに対してイラっとすることもあれば、叱ることも当然あります。ですので、「こんな気持ちは自分だけではないか?」と気持ちを押し込まずに、声に出す・話しを聞いてという・誰かに相談することが大切です。

 

子どもと良い時間を過ごす「魔法の30秒」

子どもが言うとこをきかないとき、何を言ってもゲームをやめない、そんなシーンは日常的にたくさんあると思います。「なぜ言うことを聞かないのだろう…」それは、子どもと過ごす「質」の良い時間が少ないのではないかと言われています。

しかし、日々、子育てを頑張っている親御さんに対して「子どもとしっかり向き合いましょう」「子どもに寄り添いましょう」と単にアドバイスをするのはしんどさを助長させてしまうだけです。(仕事して、お迎え行って、ご飯作って食べさせて、お風呂入れて、寝かしつけて、座る間もなくヘトヘトです!)

今回、学んだことは、時間の「長さ」ではなく、「質」を作るというもの。
過ごす時間は、30秒(〜長くても3分)です。子どもが求めるのは「時間の長さ」ではありません。
この30秒は、家事もせず・スマホもさわらず・TVも音楽も消して、子どもと向き合い、話を聞きます。
この子のためだけの時間、それが「質」です。

方法はとっても簡単!「今日の”魔法の時間”は何する?」と声をかけて、30秒だけ子どもとの時間に集中するだけ。
トランプでも、抱っこでも、おしゃべりでも何でもOKです。
手法を調べてみると「今日は●●くんと遊んで楽しかった!」「へ〜、楽しかったんだ、よかったね〜!」と、否定をせずに子どもの言葉をなぞるだけでもいいようです。
そうすることで、子どもは「自分の話を聞いてくれた」「自分のことを認めてくれた」と気づき(納得感・満足感)、そこからようやく親の話を聞いてくれるようになります。
これが「1時間しっかり向き合いましょう!」「たっぷり遊んであげましょう!」と言われると、親は白目をむきそうですが、30秒でいいなら今日から出来るかもしれませんね。お部屋じゃなくても、通園時やお風呂などのちょっとしたタイミングでもよさそうです◎(でも、大人だって「今日はもう無理〜!しんどい〜!」と言う日はあります。そんな日は無理せずいきましょうね)

子どもたち

ノーベルの役割とは

私たちノーベルは、基本的には親御さんの子育て方法に寄り添います。
しかし、命に関わることや、危険を察知した場合は、ノーベル事務局との連携や、然るべき機関への連絡も義務としてありますが、そうなる前に私たちでも、出来ることもあるかもしれません。
例えば、親御さんから相談があれば少し話を聞いてみたり、たまにうかがう第三者の「ノーベルさん」だかららこそ気付けるお子さんの出来ることや、楽しんだこと、得意なことなどを発見してお伝えしたりすることで、少しでも親御さんのストレス軽減や、しんどい気持ちを和らげる一助になるのではないかと思っています。

子どもの虐待研修

ノーベルではこんな専門研修をおこなっています

今までにも多数の研修を開催しています!(下記はその一部をご紹介)
安心安全の保育の提供や、または自身の地域でも活かせる研修は毎回高い参加率で積極的に学んでいます。

子どもの病気について(エピペンを学ぶ)

小児救命救急研修(お子さんの命を守れ!)

ヒヤリハットのケース会議

今回も、非常に学びや気づきの多い研修でした。

このように、ノーベルでは、ケース会議や専門研修を積み重ねながら、設立10年以上、無事故で安心安全の保育を提供することができています。

2022年追記

令和5年4月1日公布で、子どもの権利条約にもとづいた「こども基本法」が施行されます。日本には子どもにまつわる様々な個別の法律はあるものの、子どもを権利の主体として位置づけ、その権利を保障する総合的な法律がありませんでした。ぜひ「子どもの権利条約」とともに、「こども基本法」についても多くの方に知っていただけたらと思います。

こども基本法について(日本財団)

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