(2023.11.01更新)
代表長谷亜希ノート2030ビジョン提言
#18 病児保育という領域を超えて私たちが積み重ねてきたもの
前回記事では新事業をみんなでつくる対話を続けてきたこと、その中で、「これからつくる新しい事業は私たちがすでにやってきたことの延長線上にある」といった発言がスタッフからあったことをお伝えしました。
世間一般では「ノーベルといえば病児保育」が浸透していると思います。
もちろん、ノーベルでは病児保育を提供してきましたが、「病児保育しか提供できないという葛藤がありながら、時にはその枠を超えてサポートすることもあった」というのが正しいかなと思っています。
今回は、病児保育の領域を超えて、何を私たちはやり始めているのか、お伝えしたいと思います。
病児保育の枠を超えて
「子どもが発熱で保育園に行けない」そんなときに私たちはご家庭に訪問して子どもをお預かりします。親御さんと引き継ぎをして、お見送りして帰宅まで子どもをお預かりすることをしていますが、10時間ほど自宅で過ごしていると様々なドラマがあります。
今日はその1つの例をお伝えします。
とあるスタッフから保育時間終了後もボランティアで保育をしていたと報告を受けました。
そのスタッフは帰宅後、とても疲れているお母さんをみて、病院に行って診察を受けたほうがいいと判断しました。親御さんが帰宅後すぐに引き継ごうとしているところを、
「私が子どもをみておきますから、病院行ってきてください。こちらは大丈夫ですから」
と声をかけたスタッフ。お母さんは申し訳なさそうにしながらも病院に行くことができ、薬をもらうことができました。
ノーベルの保育スタッフは1日の保育が終了すると、専用システムにアクセスし終了ボタンをクリックします。そして、事務局側はその通知を確認し、各スタッフが保育を無事終了したことを1件1件確認をしています。
なので、その日も普通に保育を終え帰宅していると思っていたのです。
後日、その保育スタッフも報告せねばと思ったのでしょう。「実は…」と話をしてくれたのでした。その時は事務局側のスタッフも何かあってからでは遅いので必ず報告をすることを伝えたそうですが、ルール通りにしてくださいと伝えることに違和感があり、マネージャー会議で報告・発議をします。
「保育終了後にボランティアで保育をしていたのですが、どうしても親御さんの体調が悪そうで、その後の親子のことを考えると帰れなかったそうです。」
続けて、
「延長できない時間帯だし時間どおりで終了してくださいと伝えるのは正しいかもしれませんが、これで私たちはいいのでしょうか。何かできないでしょうか。こうやって報告せずにボランティアでしているスタッフはいるかもしれません。」
ルール通りにすればするほど、私たちが目指す両立はつくれないのではないか。
私にとっては考えさせられた出来事でした。
サービスをつくるということは、行動を狭めることでもあると強く思いました。
自宅に入ると本当に様々なことが見えてきます。例えば、子どもの発達についての相談はとても多く、その場で、保育スタッフができる限りの対応をしています。
ただ、ボランティアでできない範囲もあり、なんとかしたいけどできないことが多い中、もやもやして帰宅するスタッフが多いのも事実です。
私自身も昔、現場に入ったときに、病児保育の現場から見える困りごとのサポートをしていた時がありました。でも、組織が大きくなっていくとルールが必要になり、これでいいのかという問いはずっとありました。
現場と事務局との連携、他団体との連携を進めサポート体制をつくる
葛藤がありながら、ここ数年、昔やっていたように病児保育の領域を超えてサポートする事例を積極的に受け入れることにしました。
もし現場で必要だと思った場合は報告してもらい、事務局と連携して一緒になってサポートしていくこと。気になることがでてきたら、1ケース1ケース必ず話し合う。私たちでできないことは外部の団体や専門家にも頼っていく。
そう決めると、現場から声があがるようになっていったのです。また事務局のスタッフからも、病児保育以外のサポートができないか提案がでるようになりました。
実際に、NPO法人み・らいず2に在籍する臨床心理士や一般社団法人AROUNDの専門的など、他にも様々な専門性をもつ団体や個人に相談しながら、親御さんをサポートしてきました。
今までは内々でボランティア的に領域を超えてやってきましたが、今後は組織としてに正式に「子育てと仕事の両立」に関する困りごとについて、病児保育という領域を超え幅広いサポートをしていこうと思っています。
一つひとつの家庭が違って当たり前だし、それぞれの家庭が抱える困りごとは複雑に様々な要因が絡まり合っている。だからこそ、サービスをつくりこまないし、点でのサービスでは解決できないという答えをだしました。
創業当時から、「これで親御さんの両立をサポートしていると言えるのだろうか」という葛藤がありました。「子どもを産んでも当たり前に働ける社会」の実現に向けて、誠実でありたい。現場に入ると様々なことがみえてきます。その見えた景色に対して、最後まで責任を持ちたいのです。
そう思った結果、これから始めようとする新しい事業にいき着いたと思っています。
いよいよ、11月14日、その新しい事業のお話をさせていただきます。
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