(2023.10.06更新)
代表長谷亜希ノート2030ビジョン提言
#17 新規事業をみんなで創るための対話を重ねる日々
前回の記事では定量調査からみえてきた両立家庭を妨げる3つの不具合について説明しました。その中で、私たちが注目したのは3つ目の「第三者サービスを使えば使うほど、両立満足度は上がる」こと。
逆をいうと、第三者サービスを使えば、両立満足度は上がる。
では使えばいいのでは?
なぜ、使えないのか。
心理的障壁?お金?それ以外になにかあるのか?
私たちはその答え合わせをするために、定性インタビューを実施し、そこから見えてきた新事業の種を元に、新しい事業の仮説をつくりました。
(※定性調査の詳細は新事業のネタバレになるため、控えます)
いよいよ社内全体に共有する日がやってきた
2019年11月に10周年を迎え、「病児保育のノーベル」から「両立を総合サポートするノーベル」へ変化すると宣言した直後にコロナ禍。主力事業である訪問型病児保育は大打撃を受けて立て直しを迫られ、新しい事業は撤退という苦い経験をしましたが、改めて2022年頃から「新しい事業を創っていくよ」と計画を再開しました。
ただし、コロナ禍で世の中が変化していることもあり、元々描いていた2030年までの道のり(visionbook)の通りでいいのかという問いもあり、しっかり一つ一つの家庭に耳を傾けることを選択しました。
そういった過程は、定期的に月一の全体会議の場で、必要に応じて共有をしてきました。私たちが今後3年かけて、力を入れて取り組むのは「保護者の多様なニーズに答える訪問型保育などの拡充」と「多様な保育の担い手が活躍できる環境づくり」だよと。
そして、私たちがこれから新しく取り組もうとしているのは「病児以外のニーズに応える利用者向け新規事業」なんだよと。まさにこの事業を創るために、調査を重ね、様々な議論を1年かけてしてきました。
なんとか前に進むぞ!という意気込みで話しましたが、スタッフからは様々な疑問や不安、ポジティブな意見がでてきました。
「病児保育事業の立て直しが最優先ではないですか?」
「財源はどうするんですか?」
「今でも人が足りていないのに、新しい事業は誰がやるんですか?」
などなど。特に「理解はできるが大切な病児保育が優先ではないか」という厳しい言葉が、想定していた以上に多く飛び交いました。
もちろん、病児保育の優先順位を落としたわけではなく、一緒に並行してやっていくんだという思いでいましたが、全体でそのような機運を創る難しさを感じました。
対話を重ねる日々
ノーベルはトップダウンでやっていく団体ではありません。
みんなが、一致団結して進むためには次のアクションをどうするべきか。1年かけて創り上げてきたものを、たった1回の会議で理解をしてもらうのは到底難しく、対話を繰り返す日々が続きました。
まずは、会議後にとったアンケートの疑問質問にすべて応えることから始めました。
Q&A集をつくり、オンライン会議を開催。録画もして、参加できないメンバーも視聴できるようにしました。
そして、日々、保育の現場にでてリアルでなかなか会えない保育スタッフたちにはオンラインで定期的にZOOM会を開催したり、保育がないスタッフには出社してもらい、リアルでお話をすることを繰り返しました。
また、保育スタッフさんたちの月1の土曜日の定例会議のあと、みんなで疑問・不安を払拭する会を設けました。
「リアルで聞いてやっと理解ができた」
「これなら、わたしにもできそう!」
「新しい事業は他の人に任せて、私は病児保育のプロでありたい!」
と様々な声が届くようになり、不安や疑問が理解に変化していくことを実感しながらの時間を過ごしました。
私たちの現場での経験や知見を結集し、新しい事業を創る
対話を積み重ね、機運が少しずつ温まってきたところでやりたかったことがありました。
私たちは両立サポートのプロ。日々、みんながそれぞれの役割で積み重ねて得ている、知見や経験を結集させたいと思ったのです。
・私たちがこの14年間みてきた両立家庭の困りごとは??
・その困りごとに対して何があればいい?何ができる?
親御さんからのアンケートだけで事業をつくるのではなく、私たちが現場で見てきた世界を結集させる作業が始まりました。
お昼ごはんを食べながら、みんなで付箋に思いついたことを書き、ペタペタはっていく。
できる限り、一人でも多くの人に参加してほいく、ワークは3回ほど開催。
そして、その結集したものをまとめて、土曜日に約50名が集まり、さらにその作業を再度行い、知見や経験を洗い出し、両立を総合サポートするにはどんなサポートが必要かの全体像を描いていきました。
少しずつ場が温まっていくことを感じ、みんなが両立家庭のために何ができるか当事者性をもって、ワークに取り組んでいることを嬉しく思いました。
ワークを進めるなかで、「新事業は私たちがすでにやっていることの延長線上にあるんだなと思った」という感想がでてきました。それ以降、「なるほど」という人が少しずつ増えてきたことを体感しました。
保育の現場では、事務局が見えないところで、親御さんの悩みの相談にのったり、少しボランティアで残って子どもをみてあげたりしていることが事実としてありました。
まさに、私たちが家庭に入って保育をしている延長線上に新しい事業はあります。
訪問型病児保育の強みはいざという時に必ずお伺いする100%対応だけではなく、親御さんや子どもに寄り添い続けてきた結果、親御さんから得た信頼。その「信頼」が私たちノーベルが14年間積み重ねてきたもの、強みであることを改めて痛感しました。
最後に。
「事業」という言葉を使ってしまっていますが、私は今回、あえて「サービスを創らない」ことに挑戦したいと考えてます。この言葉の意味を伝えるのはとても難しいのですが、思いは1つです。
現場に入ると様々なことがみえてきます。
どうにかサポートしたいと思っても、私たちが提供しているのは「病児保育」。組織が大きくなればなるほど、利用規約やマニュアルをつくるとそれにがんじがらめになる。サービスを作り込むとやれることは限定的になってしまう。これで、親御さんの両立をサポートしていると言えるのだろうかという葛藤がずっとありました。
そこを乗り越えたい。ただその思いで新しい事業を創っています。
さぁ、いよいよ現場の実際のお話をできるときが迎えられそうです。
みなさま、楽しみにしていてください。
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