(2022.08.26更新)
ノーベルと学ぶ保育
訪問保育研修|感染症状況下におけるこころのサポートを学ぶ
こんにちは、ノーベル事務局です。
ノーベルでは保育スタッフ向けに、定期的に専門的な研修を開催しています。
今回のテーマは、「感染症状況下におけるこころのサポート~子どものための心理的応急処置~」。講師は、セーブ・ザ・チルドレンからご紹介いただいた緑川大介先生(大阪DPAT 災害派遣精神医療チーム)にお願いしました。
ノーベルからは30名ほどの保育スタッフが参加し、オンラインで研修を受けました。
どのような研修だったのか、今回の研修で学んだことをレポートします!
DPATとは?
大阪 DPAT とは、災害等が発生した際に、被災地域における精神科医療及び精神 保健活動の支援を行うため、大阪府、大阪市及び堺市によって組織される、専門的な 研修・訓練を受けた災害派遣精神医療チームのことです。
今回の研修講師である緑川先生は、東日本大震災などの被災地で被災された方のケアをされてきました。
子どものストレス反応や行動
災害などの非日常的なストレスにさらされた場合、子どもたちは不安な状態を乗り越える防御反応として、様々な反応・行動をします。
・親や養育者から離れない
・睡眠や食事を取らない
・赤ちゃん返りをする
・動きが少なくなる、もしくは多動になる
・マジカルシンキング
・遊びの中で表現する
・さまざまな身体症状の訴え(頭痛・腹痛)
マジカルシンキングとは、ひどい出来事を自分のせいだと思って、現実にはないことを言い出すといったような、不安な状態になった時に安心を得ようとして動機付けし、危機を乗り越えようとする症状です。例えば…「津波でお母さんが流されたのは、ぼくがいい子にしていなかったからだ」のように。
また、子どもたちは遊びの中で、「津波が来たぞ~!」と津波ごっこをしたり、救命救急の心臓マッサージをする真似をしたりすることがあります。
大人からするとドキっとする反応・行動も、異常な事態に対する子どもたちの通常の反応だそうです。非常時だけではなく、ストレスがかかると私たち大人も頭が痛くなったり、お腹が痛くなりますよね。
これは仮病でも何でもなくて、実際にセロトニンという物質が作用して本当に痛みを起こしているそうです。
子どものための心理的応急処置
子どもがマジカルシンキングに陥り、
「津波でお母さんが流されたのは、ぼくがいい子にしていなかったからだ」と言ったら、私たちはなんと声をかけてあげればいいのでしょうか。
私だったら、「そんなことないよ!〇〇君はいい子だよ」と答えてしまうと思います。
しかし、研修の中で先生は、次のように対応すると言われていました。
「そっか〇〇君はそういう風に思うんだね。津波怖かったよね。〇〇君はママの分も生きていこうね」と、共感して寄り添い、未来のストーリーを良い方向に持っていくようにするそうです。
また、子どもが津波ごっこや心臓マッサージごっこなどをしている時の対処方法については、「そんなことしちゃだめだよ!」など注意するのではなく、「あたたかく見守る」ことが大事とのことでした。
安心・安全な環境の中で生活すれば1か月程度で、子どもたちのこれらの防御反応は治まるそうです。
心理的応急処置の行動原則
ストレスを抱えている子どもとのコミュニケーションには、「子どものための心理的応急処置」という、子どもたちのこころを傷つけずに対応するための支援の方法があります。
支援のための準備
▶地方であれば被災地の方言についても理解しておくことが必要
▶支援物資の準備(マスクや避難所生活で必要なもの)
▶正確な情報を手に入れられる場所や手段について調べる
見る
▶子どもや養育者へ注意を向ける
▶目で訴えてくる人もいるので、ずっと視線の合う人には声掛けをする
聴く
▶支援が必要な人に寄り添う
▶共感する(同意と共感は違う)
▶ニーズや心配事について確認する
つなぐ
▶情報を提供する
▶支援できる団体や機関へ引き合わせる
◎専門家につなぐ(保健師や医療機関など)
支援する側が1人で抱え込むのではなく、適切な支援者やサポート機関につなぐことも大事です。災害時に派遣される専門家の皆さんも、被災地では大変なストレス状態となるそうです。
自分1人で支援者をサポートするぞ!と抱え込まず、適切な支援機関などの社会的サポートに頼る、色んな支援機関や相談先との繋がりを強めることが重要であると話をされていました。
ストレスに対処する
私たち大人も日常生活において、ストレスを感じることがあると思います。
自分自身のために知っておいて欲しいこととして、以下のことを紹介されていました。
おやすみ:行動を変える
食事をきちんと取り、十分な休息をとる
リラックスのための時間をもつ アルコール、カフェイン、ニコチンの摂取は最小限にする
(コーヒー1日5杯はカフェイン中毒らしいです!)
自分をみつめる
小さなことでも役に立てたことを確認する
すべての問題を解決することはできないので、やれることの限界を知る
たすけあい:社会的サポートを得る
仲間同士の声をかけ合い、互いに支え合う方法を考える
仕事を分担したり、交代制を取り入れる
友人、大切な人、信頼出来る人に話す機会をつくる
(私もよくこの方法でストレス発散しています!)
今回は「感染症状況下におけるこころのサポート」というテーマでしたが、 私自身、自分の子育てに対する悩みへのヒントになり、また、ストレスに対処する方法についても学びがあり、とても有意義な研修時間となりました!
参考
大阪府のホームページから心のケアなどのリーフレットがダウンロードできます。
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