2030ビジョン提言代表長谷亜希ノート

#9 場づくりのプロから日本・世界のコミュニティの事例を学ぶ

前回の記事ではパターンランゲージの手法を用いて、12年間、積み重ねてきた訪問型保育のノウハウを体系化するプロジェクトがスタートし、完成間近まできていることをお伝えしました。

現在、私たちはGoogle.orgインパクトチャレンジに採択されたことをきっかけに、保育・医療・福祉・テクノロジー・コミュニティづくり等の各領域の専門家とも新たに協働し、訪問型保育に関する学びを体系的にプログラム化しています。

両立をつくりなおすためには、いかに子育てを第三者に頼れる社会をつくるのか、また、その頼れる存在をいかに増やすのかが重要になると考えています。

子育ての担い手育成
そこで、これまで積み重ねてきた訪問型保育におけるノウハウをプログラム化し、いつでもどこでも誰もが訪問保育について「学び合い、繋がることができるコミュニティ」をつくれば、イキイキとした担い手が増えるのではないかと考えています。

担い手同士がつながる場が大切

今回の訪問保育のプログラム化でとても重要なポイントは、ただ資格をとることや動画を見ることではなく「学び合い、つながることができるコミュニティづくり」です。

そう考えるのには理由があります。

実際に、研修をきっかけに仲間とつながり、学び合いながら、自分の持っている可能性や強みを最大限に発揮できているスタッフたちや、ゆるやかにつながって日々の悩みや困りごとを相談しあっているスタッフたちがいます。

ノーベルの特徴として、ノーベルにいる人が良いから、人間関係が良いから働き続けていると答える人が多いのです。

ノーベルの保育スタッフ

こういった関係性づくりのきっかけや場を自然と作ってきたのです。

今まで築いてきたコミュニティを活かしながら、もっと広げていくためにはどうしたらいいんだろう。

場づくりのプロに相談する

そこで、相談をすることになったのがNPO法人Home’s vi(ホームズビー)です。

homesvi

Home’s viは場づくりの専門集団として独自の研究機関を持ち、様々な手法を用いて、経験豊かなファシリテーターがまちづくりや教育などの非営利分野や、営利組織における組織開発や組織風土改革・研修を行っています。

代表の嘉村賢洲さんとはノーベル創業期に関西の若手NPOで集まって勉強会をするなど、ともに切磋琢磨した仲間です。新しい組織論の概念である「ティール組織」の解説者でもあり、日本で組織や社会の進化をテーマに実践型の学びを提供しています。

「きっと、Home’s viなら、全国にいろんなトライ&エラーをしている事例を知っているはず」
そう思い、早速オンラインで相談しました。

Home’s viメンバーの篠原幸子さんも加わり、子育ての社会化を実現するために、どういう担い手が増えていくといいのかも含めて、コミュニティをどうつくっていくか、そのためにどんな事例をみると良いのか、議論を重ねました。

コミュニティには

1.  内部のノウハウを共有して、学び合い成長しあう、現在のノーベルのようなメンバーシップが強いコミュニティ

2. 単発あるいは数回の学びの場でコミュニティ化したり、自発的に動く人を作ったりしていくことで外部に広がっていく交流型のコミュニティ

の2つがあるが、今、ノーベルが学ぶべきコミュニティの事例は、2.なのではないか。

外部から集まってくる雇用関係のない多様な人たちの能動性を高める。そんなコミュニティづくりのケースを中心にインプットしていこうと、ある程度方向性が見えました。

日本国内・世界のコミュニティづくりの事例を知る

さて、事例を学ぶ日がやってきました。
事例を紹介する際に、篠原幸子さんからは下記3つに分けて、事例を探してきたことを説明してくれました。

1.成長への意識の熟成
成長への意識向上の仕組みが構築されている・あるいは機能している

2.暗黙知の形式知化
組織内にすでにあるナレッジやスキルを見える化し、組織内メンバーが育ちやすい環境が構築できている

3.コミュニティ
組織外にノウハウ提供することにより、組織を超えた全国的なネットワークの構築ができている。さらに、ネットワーク内で自己組織化的にやり取りが生まれ、自然と各地でアクションが生まれている

コミュニティ
その中で、紹介してくれた事例が

●約1.4万人の訪問看護師が自律分散型で働いているオランダ非営利組織ビュートゾルフ

●2017年から「社員の個人事業主化」制度をスタートした人々健康づくりに貢献しているタニタ

●顧客管理ツールを中心とした、クラウドコンピューティング・サービスの提供企業セールスフォース

●ビューティーディレクターが委託販売契約を結んだ個人事業主であり美容や接客に関する知識・技術を学べるeーラーニング・店舗での店内トレーニングもさらに充実しているポーラ・オルビスホールディングス

●地域の人の暮らしの身近な存在として『毎日の嬉しいや楽しい』を一緒につくり、『心と身体の健康と安心』を実現するコミュニティナース

●コミュニティをホストするためのファシリテーション技術を磨き合うための手法を学ぶコミュニティArt of Hosting

などなど、充実した研修プログラムをもっている企業や団体、その上でコミュニティを形成している10以上の事例を紹介してくれました。

その中で、私たちが特に共感し、もっと学びたいと思ったのがビュートゾルフです。

自律分散型組織で、約14,000人の訪問看護師が働いていて、顧客満足度・従業員満足度共に国内No1を何度も取っている組織。訪問型ということもあり、ノーベルの訪問型保育と重なりました。

全会一致でビュートゾルフを中心に、さらにインプットしていくことが決まり、ビュートゾルフに関する参考になりそうな文献をまずはインプットし、対話しながらノーベルらしい(あるいはらしくない)仕組み・基盤となる考え方を見える化していくことになりました。

私はビュートゾルフの事例と出会い、とても可能性を感じました。

利用者満足度だけでなく、働いている人の満足度が高い組織。そこには学びの場とコミュニティがしっかり築かれていることを知り、わくわくしたのです。

子育ての担い手がイキイキとする土台をつくるためのヒントがあるのではないかと。

次回の記事では実際にどんな学びを得たのか、ビュートゾルフのお話を中心に書いていきます。

 

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