(2026.06.01更新)
代表長谷亜希ノート
【まるサポ開発の舞台裏⑨】もし、彼女がいなかったら「まるサポ」は生まれなかった~最強の伴走者~
「まるサポ開発の舞台裏」シリーズも、いよいよ佳境です。今回と次回の2本で、このシリーズは完結を迎えます。
ずっと書きたかった、でも一番うまく書けるかついつい後回しになっていました。きれいにまとめることが難しい、何もないところから全方位で約3年間ノーベルに伴走してくれた方のお話。
今回は、株式会社アム代表・岡本佳美さんのお話です。
「何もカタチになっていない」手探りの始まり
「もし佳美さんがいなかったら、まるサポは今、世の中にないと思う」
本当に、そう思っています。
岡本佳美さんは、広告会社で多様なB2C商品のマーケティング戦略を手がけてきた方です。いくつかのNPOの理事も務め、企業とNPO、それぞれの現場で経営・ブランド戦略の最前線に立ち続けてきた人。
そんな佳美さんが、ノーベルの伴走者としてチームに入ってくださったのは、2022年のことでした。
当時のノーベルは、まさに激動の過渡期。「私がこんな未来をつくりたい!」という熱い想い(コトバ)だけは溢れているものの、それをどう事業に落とし込むべきか、組織をどう変えるべきか、何ひとつカタチになっていない、完全な手探り状態でした。
「このカオスを突破するには、佳美さんの力が絶対に必要だ」
佳美さんは、奔走していた私の話を、本当に丁寧に、丁寧に聞いてくれました。
「本当につくりたい社会って何?」「それはなぜ?」――。
何度も「なぜ」を繰り返しながら、私の内側にある想いを引き出してくれたのです。
「コンソーシアムって、本当に必要ですか?」
当時、私が新事業として温めていた仮説は「子育て世帯を社会全体で支えるコンソーシアムの形成」というものでした。

子育て家庭をサポートする事業者同士が横の連携もなく、点としてのサポートになってしまっているのではないか。それなら一緒に、総合的に支えられないか。また、その仕組みを企業が従業員のために購入する形にできないか。そんな構想でした。
しかし、佳美さんから返ってきた言葉は、予想外の問いでした。
「本当にコンソーシアムって必要?!! それで解決できるの?」
ハッとしました。
確かに、世の中では横の連携の必要性があちこちで語られ、様々な取り組みが始まっていましたが、うまくいっている事例があまりありませんでした。そして何より、私自身にも苦い記憶がありました。以前、NPO同士の連携をつくろうとして、難しさを痛感したことがあったのです。
また同じことをやろうとしていた、と気づいた瞬間でした。
1300世帯のデータが、「まるサポ」の種を生んだ
新しい事業をつくるには、まず親御さんの声が必要だ。そう考えて、当時私たちは大規模な調査を進めていました。回答してくださった世帯数は、約1300。
そのデータを佳美さんと一緒に読み解く作業が始まりました。
これが「まるサポ」誕生のきっかけとなる場面です。

大量のデータとにらめっこしながら、私たちが注目したポイントがありました。
それは、
「外部リソースの利用が、両立満足度に繋がることはわかった。でも、なぜ利用が一般化しないのか?」
という問いです。
利用すればラクになるし、満足度も上がる。データがそう証明しているのに、なぜ多くの親御さんは利用を躊躇し、限界まで自分一人で抱え込んでしまうのか。
今でも思うのですが、このポイントを見出すには、私たち素人だけでは本当に無理でした。大量の調査項目の中で、何と何をクロスさせるのか。どのパターンを組み合わせることで、本質が見えてくるのか。そしてそこからインサイトをまとめる作業も、見る人によってまったく異なる結論になります。
調査を「読み解く」というのは、本当に難しい作業でした。
定性インタビューで、私たちの仮説がまたも覆される
定量調査のインサイトを深めるため、定性インタビューへと進みました。佳美さんには、問いの立て方の段階から一緒に考えてもらい、インタビュー当日にも同席してもらいました。
ここでまた、調査票の設計や問いのかけ方がどれほど重要かを思い知らされました。
そして、インタビューを重ねるうちに、私たちの仮説は次々と覆されていきます。
当初、私たちは「経済的な負担」や「他人が家に入ることへの心理的抵抗」が、第三者サービスを利用しない主な要因だと考えていました。
でも、実際に親御さんの声を聞いていくと、本当の「詰まり」はもっと手前にありました。
複雑なニーズを整理し、解決策を探し、そして意思決定する。その一連のプロセス自体が、非常に難易度が高い。さらに、両立生活において時間の余裕がないことが、その意思決定をより難しくしていました。
つまり、子育て世帯の負担を軽減するモノやサービスがあっても、各家庭はサービス利用に至る「前段階」でつまずいてしまっている。せっかくのサービスが、届くべき人に届いていない。
意思決定する支援が必要なんだと。
この発見が、「まるサポ」という発想の核心になり、モニター実施へと進みました。
VISIONの刷新という、もう一つの問い
モニター実施の準備を進める中で、佳美さんからもう一つの問いが届きました。
「そもそも、VISIONを進化させないといけないんじゃない?」
鋭い指摘でした。当時のノーベルのVISIONは「子どもを産んでも当たり前に働ける社会」。10年以上、この旗を掲げて事業を積み重ねてきました。でも、佳美さんとの対話を重ねる中で、私が描く未来と、その言葉の間にある乖離に、はじめて気づかされました。
時代は変わっていた。そして、私自身の見えている景色も、確実に変わっていた。
1年以上の議論を経て、「子育てこそ、みんなで。」というVISIONに進化させることができました。

佳美さんのコトバがなかったら、そのズレに気づくタイミングは、もっと遅かったと思います。
VISIONの刷新の議論と並走しながら、モニター実施を繰り返し、親御さんの声を拾い続けて。その積み重ねの先に、「まるサポ」が生まれました。
モニターを経て確信したのは、「第三者に頼る意思決定支援」こそが必要だということ。それがまるサポの根幹です。
「なぜ?」を繰り返してくれる人の存在
VISION刷新の議論を重ねながら、モニター実施を繰り返し、徹底的に親御さんの声を拾い上げてブラッシュアップしていく。この濃密なプロセスを経て、できたのが「まるサポ」です。
佳美さんはずっと、私たちがどんな社会をつくりたいのか、なぜそう思うのか、「なぜ?」という問いを丁寧に丁寧に繰り返してくれました。私の中にある「コトバになっていない何か」を一緒に引き出してくれる人でした。
もし、あの時、佳美さんがいなかったら。 もし、自分たちだけで大量の調査データを分析し、「コンソーシアム事業」に突き進んでいたなら。
間違いなく、いま「まるサポ」はこの世に存在していません。
これが、まるサポ開発の、一番最初の話です。
さて、いよいよこの舞台裏シリーズも、次回が最終回となります。
次回は、「まるサポ」の開発プロセスを経て、私たちがたどり着いた「これからのノーベルが見据える未来」についてお話しします。どうぞ最後までお付き合いください。
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