代表長谷亜希ノート

まるサポ開発の舞台裏③ 日本初となる子育てサポート「まるサポ」はどうできた?CoBe-Techとの開発秘話

まるサポと言えば?!舞台裏シリーズで外せないのは、行動経済学・認知行動科学・心理学を専門とするCoBe-Tech株式会社さんとの協働なのです。
なぜなら、まるサポは科学的根拠に基づくサポートで、子育て分野ではまだ日本になにものをCoBe-Tech株式会社さんのサポートによって生み出せたからです。
さて今日は、その日本初となった協働の裏側をご紹介します。

助けを求められない。その一歩をどう後押しするか

まるサポは、子育て家庭の暮らし全体をオールインワンでサポートする伴走型支援です。
これまでの実態調査を通して私たちが強く感じてきたのは、子育て家庭には「頼りたくても頼れない」という大きな壁があるということでした。

いくら制度やサービスを充実させても「使いたくても使えない」

・サービスや支援を使いたいけど、どれがいいか分からない
・何を誰に、どのくらい頼んでいいか整理しきれない
・家族内の価値観の違いで話し合いができず、前に進まない
・そもそも考える時間も余裕もない!!!

こうした“意思決定の壁”は、多くのご家庭に共通して起きています。


まるサポの本質的なポイントはこの上の図で示した「決まらない」「決められない」状態を「自分で決められるようになる」ということ。
つまり、子育て家庭が誰かに頼るという意思決定を安心してできるようにサポートすることにあります。
では、どうすれば意思決定ができるようになるのか。
まず私たちが着手したのは、「そもそもなぜ意思決定ができなくなるのか?」を正しく理解することでした。そして、その原因をひも解き、どんなアプローチが必要なのかを導いてくれたのが、行動経済学・認知行動科学・心理学の専門家である CoBe-Tech さんでした。
※私自身がCoBe-Techさんに依頼するきっかけとなったお話はコチラのブログで。

行動経済学・認知行動科学・心理学の専門って

行動経済学って?認知行動科学、心理学とは何がどう違うのですか?よく聞かれます。なので、開発の舞台裏を詳細に話す前に説明しておきたいと思います。
先日、CoBe-Techの代表上木さんと取締役の平井先生に、誰でもわかるように簡単に説明してください!と聞いてきました。
一言でいうなら、「人間の行動や心の働きを科学的に解明する、人間科学系の学際的分野」だそうです。
まるサポで活かされている分野としては下記。

◉心理学とは

人間の「気持ち」「感情」「考え方」など、
一人ひとりの心の働きや行動を科学的に理解しようとする学問

◉行動経済学とは

その人たちが暮らしている社会や経済の枠組みの中で、
どう意思決定し、どんな選択をしてしまいやすいのかを扱う学問


心理学で「その人らしさ」や「つまずきポイント」を理解し、 行動経済学で「合理的な意思決定がしやすくなるよう、行動を後押しする仕組み(行動変容)」を考える。まるサポでは、この両方を組み合わせて「その人にとって、より納得感のある選択をしやすくする」
ことを目指しています。
心理学は個人へのアプローチ、行動経済学は社会へのアプローチといったところでしょうか。

現場を持つNPO×専門家だからこそ導き出せた「22の要因」

家庭の特徴を知るアセスメントツールの共同開発からスタートしました。
第三者サービス利用の際に関わっていそうな要因を一緒にブレストすることから始まりました。
「こういう条件だと、2人目を諦めやすい気がする」
「このパターンの家庭は、頼る力(ヘルプシーキング)が弱くなりがち」といった“肌感覚”を、CoBe-Techさんが一つひとつ整理し、項目案に落としてくれました。

ブラッシュアップすること数回、「意思決定に関わる要因」が出来上がりました。
その上で、アンケート調査(N=587、2023年10月)を実施し、統計解析をしてもらった結果、子育て期の意思決定に絡んでいる22の要因が抽出されたのです。
一部抜粋してお見せします。

 

子育て家庭が直面しやすい10の課題

1. パートナーとのコミュニケーションと協力
2. 健康と安定への不安
3. 家事育児の時間と精神的圧迫
4. 家族と社会からのサポート
5. 家庭内の役割と責任感
6. 時間管理と情報処理の効率性
7. 子育てサポートサービスへの関心
8. 個人の精神的な脆弱さ
9. パートナーの職業的負担
10. 職場のサポートと働きやすさ

最初の感想は、、、「そんなにたくさん!?、そら頼られへんわ」でした。たしかに実際に現場で伴走していると、意思決定にはそれくらい多くの要因が絡み合っていると、日々実感します。それを1人で、夫婦で理解して、頼るということは到底無理な話だと理解できました。
また、この調査結果から、11タイプに分類できることもわかりました。
この22の要因を土台にし、属人的な「勘」や「経験則」だけに頼らず現場の感覚と、科学的なエビデンスの両方を持ったアセスメントツールを開発しました。このツール(100問アンケート)に回答すると、家庭の特徴がわかるようになります。

高齢がん患者の行動経済学的意思決定支援を子育て支援に活かす


では、要因はわかったけど、意思決定のサポートはどうやってやっていくの?というところですが、そこはCoBe-Techさんのノウハウを存分に共有していただきました。すでに実施している高齢がん患者の行動経済学的意思決定支援のワークショップを平井先生からしていただきました。
具体的には、医療現場で活用されている問題解決療法と言われるもので、ワークシートを用いながらモヤモヤした気持ちや悩みごとを、整理するなど5つのステップ、実践のコツを教えていただきました。
詳しくは、先生の著書でも紹介されていますので、ご興味ある方はぜひ。

ここまでができて、テスト実施、モニターを募集することができたのです。私たちはこのできたものに対して、精度を確かめるために、モニターを募りました。
その時のプレスリリースがこちらとなります(プレスリリース

まとめますが、CoBe-Techさんと一緒に開発し、できるようになったのは下記で、とてもシンプルです。

  1. 心理学的なアセスメントで、一人ひとりのタイプや状態を把握する
  2. その人のタイプに合わせて、行動変容を促すサポートを設計する
  3. 結果として、本人にとってより合理的で納得のいく意思決定がしやすくなる

平井先生にはモニター期間中、月1回、実践の振り返りを一緒にしていただき、アセスメント結果からのアプローチ方法のアドバイスをしていただきました。
「やってみようかな」と思えるような選択肢や声かけ、環境づくりを工夫する。
例えば――

「夫婦で話し合う時間なんて取れません…」という家庭には
→ 一度に大きく変えようとせず、5分だけの“ミニ対話”から始める提案をする

「片付いていない家を見ると、子どもを産む余裕なんてない気がします」という家庭には
→ 「全部片付ける」ではなく、「この一角だけ」の小さな成功体験を一緒につくる

など、こうした“背中の押し方”には、先生の知見がたくさん活かされています。
さて、まだまだ開発秘話はありますが、とても長くなりそうなので、次回につなげたいと思います。


次回は、CoBe-Techさんから提案された「ガイド向け統合支援プラットフォームの開発」まるサポAI支援システム提案書の全貌をお見せしながら、どう生成AIを活かしたかのお話をさせていただきます。

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