代表長谷亜希ノート

まるサポ開発の舞台裏②「まるサポ」開発を支えた資金~CHANEL財団との出会い~

「まるサポ」の開発には3年かかりました。

「新しい事業を立ち上げるのって、お金、どうしてたんですか?」よく聞かれる質問です。
ほんとに、まるサポのようにゼロからつくる事業は、時間もお金もたっぷりかかりました。

今日は、その“お金の舞台裏”を少しお話ししたいと思います。

■ ある日届いた、一通の英語メール

2022年のある日、見慣れない英語のメールが届きました。
件名も本文もとてもシンプルで、たったこれだけ。

 

To whom it may concern,

My name is ▲□◉. I am a Programme Officer at Fondation CHANEL.

We would be really interested in hearing more about the work that you do, and would like to organise a call with you.

Could you please email me, and we can organise a meeting.

……怪しい。 最初に思ったのはそれでした(笑)。
“CHANEL”と書いてあるけど、本物なの?迷惑メールじゃない?と半信半疑。
当時、Googleの助成プログラムで通訳サポートをお願いしていたWIYのみおさんに相談して、返信してみたら——

本当にCHANEL財団(Fondation CHANEL)からのメールだったのです。

■ CHANEL財団って?

シャネル社が2011年に設立した財団で、
「女性や少女たちが自らの人生を自由に切り拓ける世界をつくる」ことをミッションにしています。世界60か国以上で250以上のパートナー団体を支援しており、安全・経済的自立・社会的参加・気候変動への適応など、幅広い分野で女性のエンパワメントを後押ししています。年間約1億2,500万ドルもの資金を拠出している財団です。
(→ CHANEL財団についてはこちら

CHANELロゴ

まさかそんな国際的な財団から突然メールが来るなんて、想像もしませんでした。
女性のエンパワメントを後押ししていることにとても共感しました。
私たちも日々現場で支援に関わる中で、女性たちが本来持つ力や可能性が十分に発揮されていない場面に直面し、「もっと活かせるはずなのに」と感じることが少なくありません。

■ 半年にわたるやりとり、そして決定

そこから、CHANEL財団とのやりとりが始まりました。
Zoomで何度もミーティングを重ね、メールで届く大量の質問に日本語で考え、
それをWIYのみおさんに英訳してもらって返信する──。
そんなやりとりが、なんと半年以上続きました。

途中で「本当に支援が決まるのかな?」と不安になることもありましたが、
それはCHANEL財団が私たちを深く理解しようとしてくれていた証拠でした。
表面的な事業計画ではなく、ノーベルの価値観や社会への視点を丁寧に知ろうとしてくれたのです。

当時のノーベルは、コロナ禍で病児保育事業の立て直しに追われながら、 「次の10年に向けた新しい事業」を模索していたタイミングでした。決まっていたのは、「病児保育の枠を越えて、両立を総合的にサポートする」という大きな方向性だけ。
そこから先はまさに、試行錯誤の真っ只中。ゼロベースで考え直し、社会の変化や家族のリアルに向き合いながら、形を探っていました。

そして2023年、ついに決定。
3年間で総額60万ドル(約8,600万円)の支援を受けることが決まりました。


当時、CHANEL財団への申請書に書いた目的の部分をご紹介します。

一つの“生き方”だけを肯定するのではなく、一人ひとりの生き方の選択肢を増やしたい。
働くと育てるを家庭と社会の両方で実現できる“新しい当たり前”をつくりたい。

■ お金が「安心」に変わった瞬間

この支援が決まったことで、私の中で大きな変化がありました。
「お金の心配をしながら、事業をつくる」ことから解放されたのです。資金があることで、チームが腰を据えて実証実験に取り組める。何度も計画を見直しながら、「本当に必要な支援とは何か?」を探る時間を持てました。

まるサポの開発は、正直に言うと何度も壁にぶつかりました。
2023年からの3年間は、まさに「試す」「悩む」「学ぶ」の連続でした。
計画が変わったり、思うように進まなかったり。
でもその時間があったからこそ、今、まるサポという形が見えてきました。
単なるサービス開発ではなく、「社会の新しい当たり前をどうつくるか」という挑戦。
その最初の一歩を支えてくれたのがCHANEL財団との出会いでした。

諦めずに前に進めたのは、CHANEL財団の“資金サポート”だけでなく、「何があっても、あなたたちの進む道を信じている」という温かい姿勢があったからです。

■NPOノーベルの資金調達について

ノーベルは創業以来、借入や助成金、補助金、寄付金など、あらゆる手段を組み合わせて資金を調達してきました。事業がまだ安定していなかった時期には、本当にこれらの資金に助けられました。新しい挑戦をするたびに、その都度「投資」という視点でどう資金を活かすかを考えてきたと思います。

ただ、私たちは一貫して「受益者からの利用料金で事業を成り立たせる」ことを軸にしてきました。寄付や助成金、補助金に頼る割合は多くても全体の30%までと決め、毎月の給与や家賃、水道光熱費といった固定費をしっかり払えるモデルをつくってきました。

安定したキャッシュフローをつくり、安心して現場を支える仕組みを築けたことはこれまでの努力の成果であり、経営者として一つの誇りでもあります。

でも、次の10年を考えると、このままではいけないと感じています。
「子育てこそ、みんなで。」というVISIONを本気で実現していくためには、資金のあり方も変えなければならない。

改めて原点に立ち返り、「誰でも頼りたいときに頼れるセーフティーネットをつくる」という創業時の思いを見つめ直しました。


その上で、私は一つの決断をしました。

「思い切って、受益者負担の比率を下げる」

これまで大切にしてきた“自立した経営”という考え方を手放すのではなく、より多くの人に支えられながら、社会全体で子育てを支える仕組みに進化させるための挑戦です。
売上構造も、資金の流れも、これから大胆に変えていきます。

ここまで考えられるようになったのは、CHANEL財団との出会いがあったからだと思っています。

柔軟な助成金の仕組み、ねばり強く耳を傾けてくださった担当者の方々。「資金を出す側」と「受け取る側」という関係を超えて、同じ未来を見据え、伴走してくれました。

その経験が、私たちに「もっと長期的に社会を変えるための資金調達を考えよう」という視点を与えてくれました。

お金は、単なる“手段”ではなく、“想いを形にする力”だと改めて感じています。

次の10年、ノーベルは新しい資金の流れをつくりながら、「子育てこそ、みんなで。」という社会の実現に、さらに挑んでいきます。(そのあたりはまたどこかで話します)

 

※次回は「まるサポ」の特徴を創り出した「CoBe-Techとの開発秘話」をご紹介します!

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