社会の課題

オランダ視察報告会:誇りをもって働くとは?~ビュートゾルフからの学び

こんにちは!ノーベル広報担当の林です。
先日11月26日、コミュニティ・バンク京信(京都信用金庫)さま主催の「オランダ視察報告会」に、代表の長谷が登壇しました。
会場には約200名近い方が集まり、オランダの訪問看護在宅ケア組織「ビュートゾルフ(Buurtzorg)」や、金融活動を通じて社会や環境に貢献し、持続的発展を目指す「トリオドス銀行」を見て感じたこと、これからの組織のあり方について熱く語り合う時間となりました。
今回は、その報告会で長谷が語った「オランダで何に心を動かされたのか」についてレポートします。

当日は、グラフィックレコーディングも行われました。

オランダ視察の概要

2025年9月、場とつながりラボhome’s vi主催の視察ツアーに、代表の長谷を含む総勢15名のメンバーでオランダを訪れました 。訪問先は、ティール組織の先進事例として世界的に有名な在宅ケア組織『ビュートゾルフ』本部でした。
現地では、『自主経営組織のはじめ方ー現場で決めるチームをつくる』の著者で、ビュートゾルフの外部アドバイザー的役割もしている組織づくりの専門家アストリッド氏による講義や、ビュートゾルフCEOをはじめ現場で働く看護師、コーチ、バックオフィスの皆さんから直接お話を伺い、実際のケアの現場にも同行(シャドウイング)させていただきました。

ビュートゾルフ(Buurtzorg)とは?

オランダで生まれた訪問看護・介護の組織で、1万5000人もの現場の看護師が小さなチームをつくり、自分たちで決定権を持ち運営を行っています。その結果、患者満足度は10点満点中9.3と極めて高く、働くスタッフの満足度も大変高く誇りを持って働いています。管理コストを抑えながら、患者さんの「自立」を支えるその仕組みは、次世代の組織モデルとして世界中から注目されています。

なぜ今、オランダへ?

ノーベルは長年、病児保育を通じて親御さんの「働く」と「子育て」の両立を支えてきました。でも実は、コロナ禍で事業が大打撃を受け、スタッフが離れていくという辛い経験をしました。その時、「これからは働くスタッフをいちばんに考えよう」と組織づくりを大きくシフトチェンジしました。
その際にご相談したのが、今回の視察を実現してくださったhome’s viの嘉村賢州さんです。賢州さんを通じてオランダの訪問看護組織「ビュートゾルフ」について学ぶ機会をいただきました。ビュートゾルフは、「上司(管理職)」がいないにもかかわらず、患者さんの満足度も、働く人の満足度も非常に高いという、不思議で魅力的な組織です。
ビュートゾルフを知ってから約3年。本や研修などで学ぶ機会は何度もありましたが、「本で学ぶだけではわからない、実際にその空気を感じたい」。そんな思いで、オランダへ向かいました。

視察で衝撃を受けた、4つの気づき

報告会で長谷が「これがすべてだった」と語った、現地での大きな気づきをご紹介します。

1.自身の仕事に「誇り」を持てているか

現地で出会ったビュートゾルフの方々は、どの人もキラキラしたオーラを放っていました。「自分自身がなぜその組織で働いているのか」という思いを持ち、自分たちの意思で選び判断している。だからこそ「目の前の人のためにやる」という自信と、自分たちの仕事への「誇り」があふれていました。私たちもメンバーひとりひとりが、ここまで誇りを持って働けているだろうか?改めてそう問いかけられた瞬間でした。

2.信頼をベースにした組織運営

「ルールって本当に必要ですか?」ビュートゾルフのCEOに現地でそう聞かれました。「社会の常識があればほとんどのことはできるよね」と言われるほど、彼らはルールよりも「信頼」をベースにしています。細かくルールを決めれば決めるほど、その人が本来持っている「らしさ」をなくしてしまうかもしれない。誇りを持っているからこそ、お互いをリスペクトできる。そんな「信頼をベースにした組織運営」に圧倒されました。

3.「管理」するほどコストは増える

ビュートゾルフの間接費(管理にかかるコスト)は、たったの8%。これは、人をコントロールしようとしたり、管理すればするほど、実はコストがかかっているということでした。「中長期計画なんて、話す時間が無駄じゃない?利用者のニーズに素直に耳を傾けるだけ」と言い切るほどの潔さ。とにかくシンプルに ”KEEP IT SMALL,KEEP IT SIMPLE” 。実はいちばん理にかなっていると腑に落ちました。

4.「信頼」にステップはない

一番グサグサきたのがこの言葉です。現地で「どう始めたらいい?」と質問したところ、こう回答がきました。
「信頼にステップはないよね」信頼は積み上げ方式ではなく、「一人ひとりのあり方」から始まるもの。「本当にスタッフを心から信頼できているか?」そんな本質的な問いを突きつけられた感覚でした。これからを考えていく時に大事にしたいところです。

未来に向けて;「まるサポ」に込めた想い

最後に未来に向けて語られたのは、この視察直後から正式スタートしたノーベルの新事業「まるサポ(子育て家庭のまるごとサポート)」のことでした。

まるサポは、ビュートゾルフを学んだからこそできた事業といっても過言ではありません。
ノーベルはこれまでは、16年「訪問型病児保育」を提供してきましたが、これだけでは子育て家庭の困りごとを支えきれないという葛藤がありました。ビュートゾルフの「目の前の人が困っていたら必要なことを何でもする」という姿勢に学び、「まるサポ」もあえてサービスメニューを作らず、その家庭と向き合いまるごとサポートしようというサービスです。

誇りを持ったスタッフたちが、信頼でつながったチームとなり、目の前で困っている親御さんや子育て家庭に向き合う、そこに大きな可能性を感じています。
「そっくり、そのまままねしてみようかな」
そして将来、ビュートゾルフのみなさんがノーベルに視察にきてくれるような、そんな組織をめざしてみたいと思っています。

いかがでしたでしょうか。
視察を共にしたメンバーは、福祉や金融など、分野も立場もさまざまです。普段の業務は違っても、「よりよい組織をつくりたい」という想いは同じ。現地では、組織のあり方について熱く深く語り合う濃密な時間を過ごしました。
今回は関西の団体による合同報告会でしたが、「次は視察メンバー全員で集まって、第2回報告会を実現したい」と話しています。

学びを実践へ。 今後、ノーベルがどのように進化していくのか、これからの挑戦にどうぞご期待ください。

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